
減酒逃避行:061「かめや @新宿」
訪問日:2024年12月30日(月)【2025.10.13 UP】
Tips01:天玉そば発祥の店。玉子は温玉
Tips02:自家製麺。ただし、小麦粉多め感あり
Tips03:つゆは甘め。出汁感強し
Tips04:L字カウンターのみ8席。椅子完備
Tips05:いまでも元気に24時間営業!
Tips06:支払いは現金のみ。配膳と同時に支払いを
Tips07:ココはいまや観光地。外国人観光客多し
Tips08:いちおうあの禁煙です
思い出横丁=やきとり横丁=しょんべん横丁。あなたはドレが好き?
誰が言ったか「しょんべん横丁」。
飲食店街にはおおよそ相応しくない呼称ですが、なんだか魅力も感じてしまう。蓄積された歴史とおおらかな昭和のイメージ。
新宿西口の「思い出横丁」は、戦後間もない昭和20年頃生まれた闇市「ラッキーストリート」にルーツがあるという。テントや掘っ立て小屋で商売をし、酒を売る。やがてバラックが建ち、赤ちょうちんがズラリと並ぶようになる。しかし公衆便所はない、という環境なワケです。あとは推して知るべしといったところですが、コトはそう単純ではないらしい。

バラックをツブしてビルを建てようとする勢力が、イメージダウンを狙って「しょんべん横丁」という呼称を広めたのだという(もともとあった呼称ですが)。横丁側は当然ソレをよしとせず、「やきとり横丁」という名前を掲げ、横丁入口に文字提灯を配す。個人的には、この「やきとり横丁」というのが一番しっくりくる呼称なんですが、もしかしたら少数派かもしれません。
しかし、いま現在は新宿駅西南口地区の再開発もストップし、「新宿グランドターミナル構想」の先行きも怪しい雰囲気で、思い出横丁の観光客による盛況さとは対照的。なにがどうなるか分からないものです。
ちなみに、昭和20年代初頭は統制品に対する取り締まりが厳しく、商売がしやすい牛や豚のもつを扱う店が増えたのだとか。その名残で、もつ焼き屋、焼き鳥屋が多いんですね。そして、生き残ったバラックは、戸板一枚で区切られた造りで、店舗同士の壁がくっついてひとつになっているコトが多い。そんなところにも、なんだか歴史を感じます。
閑話休題。
そんなしょんべん横丁で、天玉そばを開発し、人気を博しているそば屋がココ、そば処「かめや」。いまは、なんかいつでも外国人観光客だらけです。
外国人観光客の昭和ノスタルジー好きっぷりについては、「長野屋」の話へどうぞ。
かき揚げ+温玉の元祖天玉そば。このバランスは天才の発想だ
そば処「かめや」は1971年創業の老舗そば屋。L字カウンターのみ8席の立ち食い系ですが、椅子完備です。そして、「自家製麺」「ゆで立て」「天婦羅揚げ立て」を謳っています。

しかし、実際はそうではない。そばは大量に茹でて、一度水で締めてざるに置いておき、一人前ずつ温めなおすというスタイルだし、天ぷらは注文が入ってから揚げるワケではなく、常に揚げ続けている。

ただ、天ぷらについては、回転が早く常時揚げ続けているので、アチアチとはいかないまでも(時間によるかもしれないが)比較的揚げたて。サクサクで美味しいものが供されます。
改めて、メニューを確認してみましょう。

スペシャリテである天玉そばは530円(2025年10月現在は560円。かけは390円)。冷やしにしても値段が変わらないのは素晴らしいですね。よく行く立ち食い系のそば屋だと、30~70円増しというパターンが多い。ギネス認定もされた世界最大のターミナルである新宿駅至近のこの場所ですから、良心的な値段と言えるのではないでしょうか。
まあ、10分程度歩いて大久保方面・百人町まで行くと、長寿庵の天玉そばは420円だったりしますが(営業時間は短い)。かけ280円は表彰モノです。
そしていよいよ登場、元祖「天玉そば」の全貌がこちら。

玉子は温泉玉子。天ぷらは厚めで存在感が光ります。ネギは天ぷらの上にON。つゆは黒めですが、けっこう甘めで出汁感が強いもの。コレが、天玉そばのオリジンです。温泉玉子の黄身はどろりとしており、麺によく絡みます。

自家製麺というそばは、茹で加減や処理による影響もありちょい柔め。そばの香りはあまり感じず、小麦粉多めかなという印象。しかし、バランスはとてもよい。なんかもう、雰囲気や元祖という強みもあり、歴史を噛みしめる一杯となります。なんかいろいろと書きましたが、結局はウマいのです。特に、飲み帰りにはたまらない。

天ぬきでもいいかもなあと思えるかき揚げ。玉ねぎの主張が強めですが、にんじんや春菊の存在も感じます。衣は厚め。揚げたて気味なのでサクサク感があり、そのまま食べても、つゆに浸して食べても美味しい。いい塩梅です。
総じてバランスがよい。そう思います。そして。
外で食べているに等しい開放感のあるカウンターですから、寒空で食べるアチアチのおそばがたまらない。この雰囲気、この環境、この味。そのすべてが合わさったとき、ほかにはない名店としての存在感が、くっきりと浮かび上がってくるのです。
(価格はすべて税込)
天玉そばは偉大なメニュー。つくってくれてありがとうという思い
接 客:★★★★★★★☆☆☆
味 :★★★★★★★☆☆☆
雰囲気:★★★★★★★★★☆
総評:飲んだくれに相応しい味と雰囲気。24時間営業という懐の深さ。このお店は尊い存在だと思うのです。
